東洋医学の現場から

辛い花粉症の漢方治療

辛い花粉症の漢方治療

F子さんは30代、色白でほっそりした※1真面目で清楚な女性です。
彼女は月1回、会計事務所より当院の会計処理に来てくれます。
そのF子さん、「花粉症が辛いんです」と一言。花粉症の女性

「とにかく鼻水が凄いんです」。※2

「でもね、病院で花粉症の薬を出してもらったら頭がクラクラして、胃が気持ち悪くなっちゃって、飲めないんです。※3普段からめまいはしやすいんですけどね。※4
それで、鼻に花粉を防ぐ薬を塗って、とにかく我慢してるんです。」

彼女は膝に毛布をかけて仕事しています。※5
大丈夫?寒い?と訊くと「大丈夫です。寒いの慣れてますから。」※6

こういう方には、漢方の出番が多くあります。そして、彼女の訴えには、処方を決めるヒントが多く含まれています。

そのココロは…

※1.漢方は体格が良く、丈夫な「実証」の人と体格が華奢で疲れやすい「虚証」の人では使える薬が異なります。彼女は虚証。こういう人は往々にして胃腸虚弱です。

※2.鼻水が多いなど水分の分布異常を「水毒」といい、利水剤(水を捌く薬)の出番です。また大量の水様鼻汁がある人は冷えていることが多いのです。

※3.西洋薬が胃腸に障る、やっぱり胃腸虚弱だったんですね。胃腸が弱いと頭がクラクラするとか水毒の症状も起こしやすい傾向にあります。

※4.めまいも水毒の症状のひとつです。

※5.手足が冷える、冷え性です。

※6.普段から冷えている人は冷えに慣れているために、自分からは冷えを訴えないことが多いのです。

 

そんな彼女にはどんな漢方がいいか、考えてみます。

A. まず、大量の鼻水に悩んでいるので利水剤を使いたい。花粉症の代表的な漢方として小青竜湯があります。利水作用・抗アレルギー作用・体を温める作用を併せ持ち、効果もシャープですが、含まれている麻黄という生薬が、彼女には胃腸に障る可能性があります。よりマイルドな苓甘姜味辛夏仁湯がよいでしょう。
ふだんからめまいを起こしやすいことにより、胃腸虚弱な方のめまいに有効な苓桂朮甘湯を一緒に飲めばさらに有効です。

B. 漢方の治療には、今出ている症状を治療する「標治」と、その大元となった体質を治療する「本治」があります。F子さんの「標治」薬は苓甘姜味辛夏仁湯や苓桂朮甘湯。「本治」薬は冷えと水毒を治療する当帰芍薬散、胃腸虚弱を改善する六君子湯や人参湯がいいでしょう。

こんなことをつらつらと考えていたら、「先生、患者さんです」と診察室より呼ばれてしまいました。ごめんねF子さん、ちょっと待っていてくださいね。

goto-topページトップへ